日本語発話上には問題なくても、英語が発音できないことが多いのは…。
この20年間程で、何名もの生徒さんが抱えてきた舌の問題がある。
それは、舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)。
舌(ベロ)の裏側に、ベロ先又は先に近い部分から舌の付け根にかけてついているひだ状の膜がある場合、日本語であっても明瞭に発音しにくい。
かろうじて、日本語の発音に問題がない場合であっても、実は英語の発音には大きな問題となることが多い。
英語の発音の場合、特に / r /, / l / , / n / の発音では、ベロ先を使うために発音が困難、または不可能となる。
具体的に示してみると、深刻さが理解できるかと思う。
① 子音 / r / の場合、ベロ先を上から奥の空間に向かって反らせることになる。
例えば、red, read, write, tree, orange, dream など。
② 英語の母音の / ɚ / の発音は、子音 / r / と同じ発音になる。
イライザ前田塾オリジナルメソッドでは、母音に呼び名をつけており、 / ɚ / は「ベロソリア」と命名している。
その名の通り、「ベロ(先)をそらしてア」と発音する。その際に口の形の指導も別にあるが。
例えば、bird, girl, turn, nurse, park, ear など。
③ 子音 / l / の場合、ベロを突き立てて、ベロ先を上の歯茎につけたままでベロの両端から音を出す。
例えば、lip, lead, listen, line, lack, load など。
ちなみに、この / l / で始まる単語は、日本人の発音が通じなく苦手とするもの。
④ 子音 / n / の場合、ベロの縁全体を上の歯茎にしっかりとつけて発音する。
例えば、nice, nine, fine, can など。
この / n / の音も、日本語の「ン」とは異なり、日本人にはベロの力と腹式発声が足りないために不明瞭な発音となりがちだ。
私の発音基礎学習指導では、ベロ先をどこにどう付けて、どの様に発音するかということを徹底しているので、生徒さん達は、訓練を重ねて明瞭に英語の発音ができている。
発音矯正レッスンを受講されている大人の生徒さん達にも、同様に指導されていただいている。
以上のことから、舌小帯短縮症の場合、物理的に発音が困難、又は不可能な場合もある。
アメリカの医師達は、子供がその症状を患っていて親や保護者が放置しているならば、育児の “neglect” だとして痛烈に批判しているほど、深刻な問題とされている。
舌小帯短縮症の場合、生徒さん個人により、様々な指導をしてきた。次回は更にその様子を紹介していきたい。